お客様に「美味い!!」と言ってもらえるようにと、日々製品の味を五感で検査されている「官能パネリスト」の松本貴通さんにお話しを伺った。
アサヒビール株式会社 醸造部
松本貴通さん
自分で味を確認したかったんです
社内でのテストがあり、3度目の挑戦で「官能パネリスト」となった松本さんは醸造部の所属。酵母の状態によってビールの味が大きく左右されるという部署で仕事をしていて「自分で味が確認したかったんです。」と話す。
そもそも「官能とは、感覚器官の機能のこと」と辞典にある。アサヒビールでの「官能パネリスト」とは、ビールが出来るまでの様々な段階で実際に五感を使って検査する人のこと。
公的な資格ではないが、その会社の味を左右する部署。
厳格な社内テストがある
のもうなづける。銘柄を当てるブラインドテストらしい。
原材料・半製品・製品と3段階での検査が毎日時間を決めて行われている。180名ほどの社員がいる西宮工場で「官能パネリスト」は約20人。
関東にある研究所には女性が多いが、男性の多い工場なのでここの官能パネリストは殆どが男性。
「最初から、舌に自信があったというわけではなかったんです。でも自分で味を確認したいという思いからこの資格を取りました。
ビールを飲むのも仕事になれば…
飲んでいると見えてくる
ものなんです。味から発酵状況が分ります。」
人間の五感が、科学の分析を補う
原材料と言えば、麦芽やホップや仕込み水。使用前の検査が主で異味・異臭をみる。
半製品とは、麦汁や、発酵終了後の半製品、貯酒での半製品(酵母が入っている段階)などを言い、やはり異味・異臭の他、発酵工程にバラつきがないかを調べる。
製品とは、きちんとビンや缶に詰められたもので、異味・異臭は勿論、商品特性に合っているかどうかをチェックする。酸化品(一ヶ月物と二ヶ月物)の検査も行われている。
酸化品・・・いうのは、その日できたビールを取って置き、ちょうど一ヵ月後、二ヵ月後に飲んでチェックするらしい。
「時間の経過で変化はしますが、著しい変化がないかどうかを検査します。」
お腹が空いている時間が一番感覚が敏感
になるので、毎日午前11時頃と午後4時頃が検査の時間。
勿論、新商品の開発研究にも余念がない。「やはり一番最初に発売した所が有利ですから、市場の状況や様々なことを考えてタイミングを見ています。」
職業病のようなのもです
一日2回の検査で飲む量は、個人差もあるが多い人で大瓶2本分くらいになるらしい。もちろん検査が仕事だから、リラックスして飲めるわけではない。
「原料の麦芽はかじってみます。工場によって使っている水も違いますが、あちこちの工場で作られている商品にバラつきがあってはいけないので
飲み比べてチェック
もします。」
味を決め込んでいる「発酵」という仕事をしているから、このパネリストとして仕事がしたかったと言う松本さんに、このお仕事をしていて辛いことは??と問うと「プライベートで飲んでいても素直に飲めないんです〜(笑)日々、当日出来た製品を飲んでいますから、よそで飲んだ時、味が気になることがありますね。まあ、職業病のようなものです(笑)」
ビールは生き物。
直射日光、温度変化に弱いし、空気に触れると味が変わる。それを日光臭というらしい。
10分も置くと日光臭が出てくる
という。瓶ビールよりは缶の方が気にならないらしい。それにしても、出来立てのビールはきっとおいしいのだろう。
ビールは「のど」で飲むと言われたが・・・
「日本酒やワインは味わうが、ビールの味はわからない・・・って思われていました。」と説明してくださったのは総務部の網干泰民さん。「スーパードライを出す時に市場調査した時、お客様も
パソコン画面を見ながらの一杯
ビールの味が分かる
と言う結果がでたんですね。1987年3月17日がスーパードライの誕生日です(*^_^*)」
そこからビール業界が大きく変わってきたのだろう。
現在、アサヒビール西宮工場で製造しているのは、スーパードライをはじめとしたビール、発泡酒や第三のビールも含めると6種類。
温度管理など、コンピューターでしっかり管理されている工程だが、
機械だけでなく人が検査する
と言うのは、やはり嗜好品には成分だけでない何かが大きいということなのだろう。
「自分の
五感を鋭く
しておく必要があると思っています。もちろん風邪などを引いても支障が出ますし、平日は、刺激物もなるべく取らないように気をつけています。」
とてもまじめにお答えくださった松本さん。「味と言うのは、人間の持つ感受性の部分が大きいと思います。日々訓練です。」
お客様に「美味い!!」と言ってもらえるために何が出来るか??常にこのことが頭の中にあるのだろう。